Blu-rayコレクターズエディションの特典映像にある「新海誠監督講演」に基づき、『君の名は。』に込めた作者たちの思いについて確認してみます。
その1は、「2つのログライン」と「物語の因果律」いうお話です。
以下、「新海誠監督講演」をベースにしていますが、表現その他、自由にやっていますので、文責はサイト管理人「たもつ」(以下、「私」と記す)にあることをご了承ください。
『君の名は。』の2つのログラインについて
『君の名は。』の2つのログラインについては、こちらの記事にも書きました。お読みいただけると嬉しいです。
物語をつくるプロの作者は、まず、「ログライン」を作成することからはじめます。「ログライン」とは「物語の内容を短く数行で書いたもの」であり、あらすじではなく、コンセプトです。
ここでいうコンセプトとは、「どういう話を伝えたいのか」ということを端的に表したものです。
映画『君の名は。』をつくるにあたって、新海誠監督たちは、2つのログラインを考えました。
- A:夢で出会った少年と少女が、やがて現実でも出会う話。
- B:夢のお告げを受けた少女が、人々を災害から救う話。
そして、この2つのログラインはどちらも典型的なパターンで構造化されています。それについては後述します。
いずれにしても『君の名は。』は、この2つのログラインをテーマとして展開していくのです。おおよその展開は次のようになっています。
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- プロローグ
- オープニングA
- ログラインA
- オープニングB
- ログラインB
- エピローグ
- 【Boy meets girl】
- 【Boy losts girl】
- 【Boy meets girl, again】
- 物語のなかで語られたことは必ず物語りのなかで起こる。
ログラインAは【Boy meets girl】
『君の名は。』は、若い男女が出会う物語という一つの側面を持っています。それがログラインAです。そして、この「若い男女が出会う」という物語は【Boy meets girl】というひとつのジャンルにもなっていて、世界で愛される物語のひとつの典型パターンです。
さらにこの【Boy meets girl】は構造的には次の3つで構成されます。
このパターンの話は必ずこの形を取ります。もちろん、映画『君の名は。』もこの構造でログラインAが展開されています。この展開の詳細は別記事で書く予定です。
みなさんは、この【Boy meets girl】【Boy losts girl】【Boy meets girl, again】はどこでどう展開されているのか映画『君の名は。』で答え合わせをすると面白いかもしれません♪
ログラインBは【昔話】
次にもうひとつのログラインBですが、これは昔話です。夢のお告げを現実化するという【昔話】なのです。この話のパターンについては、古くは、日本書紀、古事記などのなかにもたくさんあり、日本人に愛された展開です。
新海誠監督は講演のなかでこう話しています。
『君の名は。』は、「ログラインB」の上に、ロマンチックな「ログラインA」が乗っているということが、他の映画にはあまりない特徴だと思います。
僕は、もしかしたらこの映画が、こんなに1千万人以上の人に見ていただけたのは、この構造があったからなのかな、これもひとつの理由なのかなと思ったりします。
僕達がずっと子供の頃から親しんできた昔話のお話の上に、わかりやすい少年と少女の出会いが乗っている。それが『君の名は。』なんですね。
物語の因果律〜語られたことは必ず起きる
『君の名は。』を深く理解するためには、ここまでに書いた「2つのログラインの構成」を知ることが1点。そして、もう1つ大切なことがあります。それが「物語の因果律」という話です。
物語には、物語を展開させる、動かすための、物語のなかだけの因果律があります。物語の作り手はその因果律を意識して物語を書くのです。それは端的に言うとこういうことです。
『君の名は。』では、いろいろなところに、この因果律の仕掛けがほどこされています。それについても、詳細については、このあとに続く記事で書くことにします。
まとめ
今回の記事では、映画『君の名は。』を深く理解し、より楽しむための作り手の考え方、とくに「ログライン」と「因果律」について、そのポイントを書きました。
続く「その2」では「ムスビ」について書く予定です。「ログライン」「因果律」「ムスビ」を概略理解すれば、いよいよ、『君の名は。』に作者が込めたいろいろな思いを理解する前提がコンプリートです♪
※アイキャッチ画像の出典:pixabay
(物語をイメージする画像として使わせていただいています。)